Ⅴ. 放射線治療装置・安全性

 

1.放射線治療施設

放射線治療は、放射線を使用するため病院内で放射線防護を考慮した区画に作られることが多く、その中に放射線治療のための施設が設置されて、放射線治療部門としている病院が多くあります。部門内に放射線治療室、治療操作室、治療計画CT装置室、治療計画CT操作室、治療計画室、放射線治療診察室、工作・測定機器室、待合室、受付、会議室やスタッフ控室等などを配置しています。
がんセンターなどの治療装置を複数台有している大きい治療施設では、治療室以外にも小線源の治療室、腔内照射装置、治療計画装置が複数有る場合があります。
 

2.放射線治療室

放射線治療装置を設置して患者さんに放射線を照射する部屋です。放射線治療装置は、強力な放射線を発生するため放射線が室外に漏洩しないようにコンクリート等で遮蔽した放射線治療室に設置します。治療室は設置する装置にもよりますが、放射線が照射される壁はコンクリートの厚さ1.5~2.0mで遮蔽してあります。このため、治療室には窓等は無く、出入り口も遮蔽用の鉛等が入った厚い扉が設置してあります。これらの放射線遮蔽を考慮して放射線治療室を地下に設置している病院が多くあります。
 

3.放射線治療装置

放射線治療装置は、色々な種類が有りますが一番多く普及している装置は電子を加速して放射線を発生させる直線加速器(リニアック)が使用されています。北海道内にある治療施設も多くがリニアックを使用しています。装置は電子を加速してターゲット(タングステンや銅など)に当ててX線を発生させます。エネルギーは4MV~10MV(MVは、100万ボルトの電圧で加速したエネルギーです。)の装置が多く使用されています。
治療装置はコンピュータで制御されており、操作は操作室でモニター画面を見ながら行います。また、治療室内は窓がないためモニターTVで患者さんを見ながら照射をします。
治療装置はリニアック以外にも腔内照射装置やガンマナイフ、トモセラピー等多くの種類があり、治療目的や照射方法により使い分けられます。
 

4.治療計画装置

治療計画装置は、患者さんに放射線を照射する方法を決めるために重要な装置で、放射線の体内の線量分布や線量を計算する専用のコンピュータのシステムです。治療計画は放射線治療に先だって行われ、CT画像を使用しますのではじめに治療計画CT装置を使用してのCT撮影を行います。次にこのCT画像を用いて照射方法を決めて線量計算を行い照射方法を決めます。決めた照射方法は、治療装置に送られて照射が行われます。
 

5.放射線治療装置の管理

放射線治療装置を使用して放射線を腫瘍の位置に正確に照射するためには、装置の精度管理が重要になります。治療装置の精度管理は、機械的な精度管理と放射線量管理に分けることができ、機械的精度は装置の回転や各部品の動きの精度、治療寝台の動き撓みなどが問題となります。また、放射線量管理は非常に重要で照射線量の精度に直接影響しますので、様々な線量測定を定期的行ってチェックしています。これらの治療装置に関する管理は、担当者が毎日行っていますが、これとは別に装置メーカが定期的に行うメンテナンスも行っています。
また、放射線治療施設は国の標準線量計と校正した線量計を必ず設置しています。この線量計で治療装置の線量を定期的に測定(一週間に1回程度)して治療で照射する線量が正確であることを確認・校正しています。
 

6.放射線管理

放射線治療施設は放射線を使用するため、放射線が施設外に漏洩しないように管理しています。また、法律で放射線を使用する施設は、適切に管理することが決められており病院の放射線施設も法律に則った方法で作られています。
放射線治療を受ける患者さんが放射線の照射を受けても放射線が身体に残ったり、身体から放射線が出ることはありません。但し、小線源治療(組織内照射)と云って患者さんの腫瘍の部位に放射線を出す線源を入れて照射する場合は、線源が患者さんの体内に在るため、治療を受けている患者さんからは放射線が出ています。
放射線治療装置は、スイッチを入れて放射線を患者さんに照射しているときは放射線を放出していますが、装置を止めると放射線は出なくなります。また、放射線治療装置はきちんと遮蔽した治療室内に設置してあり、ドアが開いているときは放射線が出ないように成っています。患者さんに放射線を照射する場合は、照射のとき治療室の外側で放射線が漏洩しない構造になっています。
放射線治療施設は、定期的に放射線量を測定しています。また、定期的に国の施設検査を受けています。従って放射線治療室の外側に放射線が漏洩することはありません。不明な点は、担当者に聞くと詳しく教えてくれると思います。