Ⅳ. 放射線治療の手順

放射線治療(リニアックを使用して外照射を行う場合)は、普通以下の各プロセスで行われることが一般的です。
 

1.治療のための診察

放射線治療を始める前に放射線腫瘍医が診察を行い、放射線治療が適応か、どの様な放射線治療が良いかを検討します。これは、X線検査、CT、MRI、PET等の画像診断、腫瘍の病理診断、病期の判定、腫瘍の進展範囲、その他の検査結果や患者さんの状態を基に治療の目的・方法を決めます。
患者さんにはこれらの結果を説明し、放射線治療によって期待できる効果と副作用を説明します。これにより、放射線治療をおこなう同意を患者さんからもらいます。
 

2.治療計画

放射線治療の照射方法を決める重要な過程で以下の各内容からなります。
 
(1) 治療計画に必要な画像の取得 
放射線を照射する体内の位置や範囲を決めるために、CT検査やX線透視装置を用います。特にCT検査は治療する腫瘍位置を決めるためとCT画像を使用して放射線の線量分布を計算するため必ず必要となります。また必要に応じてMRIやPET検査、超音波検査なども行います。
 
(2) 治療補助具の作成
放射線治療は、体内の腫瘍の位置に正確に照射する必要があります。また、放射線治療は20~30回以上にも分けて照射しますので、毎回同じ場所に正確に照射するために固定具(頭頸部ではシェルと云います。)や専用の枕や体の固定具などを患者さんに合わせて作成します。照射位置の精度は治療成績にも影響します。
 
(3) 照射方法の決定、線量分布計算
治療計画装置という専用のコンピュータで、照射する容積(腫瘍の範囲とリンパ節などの照射する範囲、及び、体内の各臓器の位置など)をCT画像を利用して設定します。次に照射の方向、照射野の大きさ、様々な付属器具などを決めて体内の線量分布を計算します。得られた線量分布から患者さんの腫瘍位置とその他の正常な臓器の線量をさまざまな角度から検討することで、個々の患者さんに毎に最も適した照射角度と照射範囲および照射線量を決定します。最近は、複数のCT画像を用いて体内の3次元治療計画を行い、腫瘍の部位に限局して放射線を照射することができるようになっています。決定した照射方法は、治療装置に電気的信号として送り照射の準備を行います。これは、照射する患者さんの氏名は基より照射する放射線のエネルギー、照射角度、照射野、使用する補助具の情報など照射するための様々な情報からなります。
 

3.治療

治療計画で決定した照射方法で患者さんに放射線治療を開始します。一般的な放射線治療では、1週間に4~5回の照射を全部で20~30回照射します。実際の放射線照射は以下の各内容からなります。
 
(1) 患者セットアップ、照射位置の確認
患者さんを放射線治療室内で治療装置の寝台に寝て頂き照射の準備をすることを患者セットアップといいます。このとき患者固定具(シェル)や専用の枕などをを使用して体位の再現性や照射部位を毎回決まった体位になるようにします。次に照射位置を確認するため、治療装置で写真撮影を行い治療計画で決めた位置と合っているか確認します。この撮影は、治療装置のX線で撮影する場合、治療装置に付いているX線装置で撮影する場合、治療室内設置した専用のCT装置やX線装置で撮影する場合などがあります。照射位置の確認は、初回は必ず行い、開始後は照射部位や照射方法毎に必要に応じておこないます。
 
(2) 照射
照射位置の確認が終わった後、照射をおこないます。照射は方法によりますが1回数分の照射で終了します。最近の治療装置はコンピュータ制御されており、照射角度、照射野、付属装置、寝台の位置など多くの設定が治療計画された情報に則りコンピュータ制御で行うようになっており、照合も行います。
 
(3) 治療中の診察
放射線治療期間中は、定期的に放射線腫瘍医が診察をおこないます。これは、照射している腫瘍の反応や腫瘍の状態、照射による副作用等が無いかどうか、患者さんの状態などを診察し、必要であれば照射方法や照射位置の変更をする場合もあります。放射線治療の目的や治療部位によっては、治療途中での照射方法の変更が初めから予定して治療計画をする場合も多くあります
 

4.治療終了

予定された放射線治療が終了したあとは、定期的に放射線治療医の診察を受ける必要があります。これは、照射した腫瘍状態を経過観察し放射線治療による腫瘍制御を評価します。治療方法によっては治療が終了後に効果が出てくる場合も多くあります。また、放射線治療による副作用などについても診察します。
放射線治療後の診察は、腫瘍の治癒や腫瘍状態、再発や障害が発生してないかなどを評価し、治療方法の分析をするために非常に重要です。